導入:研究開発型スタートアップの事業化を加速させるNEDO STSとは

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援(STS)」は、特定の技術シーズを持つ創業初期のスタートアップにとって、事業化の大きな推進力となる助成金です。しかし、その申請プロセスは複雑であり、計画的な準備が採択の鍵を握ります。

本記事では、NEDO STSへの申請を検討しているシード期の事業者様向けに、公募情報の確認から申請、採択後の手続きまでの一連の流れを、具体的な5つのステップに分けて解説します。公式情報に基づき、実務的な視点から各段階での注意点を網羅することで、申請準備を円滑に進めるための一助となることを目的としています。

ステップ1:公募要領の精読と自社の適合性確認

申請準備の第一歩は、NEDO公式サイトで公開される「公募要領」を徹底的に読み込むことです。ここには、対象者、対象技術、助成対象経費、審査基準など、申請に必要なすべての情報が記載されています。

主な確認事項:

  • 対象者要件: 設立からの年数、資本金の額、研究開発型スタートアップの定義など、自社が条件を満たしているかを確認します。特定の技術シーズを事業化の中核に据えていることが大前提となります。

  • 対象事業: 助成対象となる研究開発のフェーズや内容が、自社の計画と一致しているかを確認します。実用化・事業化に向けた具体的な研究開発計画が求められます。

  • 助成額・助成率: 助成金の上限額(例:7,000万円)と助成率(例:助成対象経費の2/3以内)を把握し、自社の資金計画と照らし合わせます。

  • スケジュール: 公募開始から締切、審査期間、事業期間までの全体像を把握し、計画的に準備を進める必要があります。

注意点: 公募要領は年度によって内容が改訂される場合があります。必ず最新の公式資料を参照してください。不明点がある場合は、公募期間中に設定される説明会に参加するか、問い合わせ窓口に確認することが重要です。自己解釈で進めることは避けてください。

ステップ2:事業計画書を中心とした申請書類の作成

公募要領で求められる申請書類一式を準備します。特に重要となるのが「提案書(事業計画書)」です。審査員は、この書類に基づいて事業の将来性や技術の優位性を評価します。

作成する主な書類:

  • 提案書(事業計画書)

  • 研究開発の実施体制図

  • 研究開発責任者および主要研究員等の経歴書

  • 事業全体の資金計画書

  • 直近の財務諸表

  • その他、公募要領で指定された書類

事業計画書作成のポイント:

  • 技術の新規性・優位性: 既存技術との比較を通じて、自社の技術が持つ独自性や優位性を客観的なデータで示します。

  • 市場性と事業化計画: ターゲット市場の規模、成長性、そして製品・サービスをどのように市場に投入し、収益を上げていくかの具体的なロードマップを明確に記述します。

  • 実施体制: 経営陣や研究開発チームが、計画を遂行する能力と経験を持っていることを示します。

  • 資金計画の妥当性: 助成金をどのように活用し、自己資金や他の資金調達と組み合わせて事業を推進していくかの現実的な計画を提示します。

ステップ3:電子申請システム(e-Rad)の利用準備と提出

NEDOの助成金申請は、多くの場合、府省共通研究開発管理システム(e-Rad)を通じて行われます。e-Radを利用したことがない場合は、早期に研究機関および研究者情報の登録を済ませておく必要があります。

手順の概要:

  1. e-Radへの登録: 企業の代表者等がe-Radのウェブサイトから利用申請を行います。承認には数日かかる場合があるため、締切直前ではなく、余裕を持って手続きを開始してください。
  2. 申請情報の入力: e-Radのシステム上で、公募要領の指示に従い、必要な情報を入力します。
  3. 申請書類のアップロード: ステップ2で作成した事業計画書などの書類を、指定されたファイル形式(通常はPDF)でアップロードします。

よくあるミス: 締切間際にアクセスが集中し、システムが不安定になることがあります。また、ファイルのアップロードに時間がかかることも想定されます。締切日の数日前には、すべての手続きを完了させることを強く推奨します。

ステップ4:面接審査(ヒアリング)への準備

書類審査を通過すると、通常は面接審査(ヒアリング)が行われます。ここでは、事業計画書の内容について、審査員からの質疑に応答します。時間は限られているため、要点を簡潔かつ的確に伝える準備が不可欠です。

準備すべきこと:

  • プレゼンテーション資料の作成: 10〜15分程度で事業の全体像を説明できるよう、要点をまとめた資料を準備します。

  • 想定問答集の作成: 技術の核心部分、市場分析の根拠、競合との差別化、資金計画の詳細など、深く掘り下げられそうな質問を予測し、回答を準備しておきます。

  • チームでの役割分担: 経営責任者、技術責任者など、複数のメンバーで審査に臨む場合は、誰がどの質問に答えるかを事前に決めておくとスムーズです。

審査では、事業に対する熱意やチームの実行能力も評価の対象となります。自信を持って、論理的に説明することが重要です。

ステップ5:採択後の交付手続きと事業開始

無事に採択された後も、すぐに助成金が振り込まれるわけではありません。採択通知を受けたら、速やかに「交付申請手続き」を行う必要があります。

採択後の流れ:

  1. 交付申請書の提出: 採択内容に基づき、助成事業の経費内訳などを詳細に記した交付申請書をNEDOに提出します。
  2. 交付決定通知: 内容が承認されると、NEDOから「交付決定通知書」が発行されます。この通知をもって、正式に助成事業を開始できます。
  3. 事業の実施と報告: 事業期間中は、計画に沿って研究開発を進めます。中間報告や事業終了後の実績報告など、定期的な報告義務が発生します。

注意点: 助成対象となる経費は、原則として交付決定日以降に発生したものに限られます。採択されたからといって、交付決定前に発注や契約を行うと、その経費が助成対象外となる可能性があるため注意が必要です。

まとめ

NEDO STSの申請は、公募要領の正確な理解から始まり、説得力のある事業計画書の作成、計画的な電子申請、そして万全な面接準備と、多岐にわたるステップを慎重に進める必要があります。各ステップでの注意点を押さえ、余裕を持ったスケジュールで準備に取り組むことが、採択の可能性を高める上で極めて重要です。

本記事で解説した手順を参考に、ぜひ挑戦をご検討ください。詳細な情報や最新の公募要領は、必ず公式サイトで確認してください。

公式サイト情報

  • 助成金名: 研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援(STS)

  • 実施機関: 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

  • 公式サイト: 最新の公募情報はNEDOのウェブサイトをご確認ください。

  • リンク: https://www.nedo.go.jp/koubo/index.html